「めくるめくワイン騒動」

 

 暫くぶりに旅を再開したホームズ達の前に、突然またしても海賊達が現れた。
「おいおい、てめぇ等!! 無事でこの場所を通れると…?」
しかし、連中は一団の前にいる金髪の若者を見るなり、顔面蒼白どころか血の気を完全に喪失した。
「わああ、ホームズだ、お助けぇーー!!」
腰砕けと化した海賊達はそのまま回れ右で退散しようとするところだったが…一人の膝が一本の矢により射抜かれた。
「普段なら脳天に容赦なくグッサリだが、ラケルみたいな真似しちまったぜ…というわけでお前等、この俺から本気で逃げられるとでも思っているのか?」
海賊まん前に啖呵をきったその男は使い込まれたロングボウを片手で回転させ、決まったと言った余裕の表情。
「ひぃぃぃ!! 思ってません思ってません、思ってませんからお助けをぉぉぉぉ!! …ぎゃああ!」
今度は海賊の足下にピラムが突き刺さった。
「ふ…助けて欲しかったらお宝全部…ん?」
ホームズはつと上を見た。瞬間に今度はホームズの血の気がひいていった。そこには、今一番いて欲しくない人物の姿があった。
「命かお宝全部置いて行きな!!」
物騒な言葉の割には、変に幼い声がしたので、海賊らも上を向く…しかしながら、ホームズのとは違い、連中から見れば丁度その人物が太陽を背にしていたので、何が何だか全く以て分からなかった。ただ一つ、そのシルエットからある化け物を勝手に連想した。
「…ま、まさか、夜な夜な間抜けな男の枕元に現れ、甘い声でかどわかしてはバリバリ喰らう怪鳥…ま、まだ死にたくねぇいよー!!」
変な説明口調で海賊らは一目散に退散していった。途中、何処に持っていたか金貨やら宝石やらを大量にばらまきながら。どうやらその怪鳥には、光り物の光沢に弱いという弱点があるようだが…。

 「あーもうっ、まるで私が化け物か何かみたいに…それはないわよ!」
一働き(?)終えて下に降りてきた。そこでようやっとその肖像が明らかとなったが、目が合うなりホームズは大声を張る。
「サーシャ…このどアホ!! 海賊ごっこしてるな、大怪我するだろが!!」
「海賊ごっこ? …て私はホームズの前の言葉をそっくり真似してみただけなんだけど」
サーシャ本人に悪気は全くなかったが、その態度が余計ホームズの、怒りというより焦りをかき立てる。
「十分海賊の真似事だわっ!! 少ししつけが足りないようだな…さてはケイトの奴良いようにサーシャのおもりを押し付け…」
その言葉は何者かの鉄拳に遮られた。誰かと言えば…いつの間にかヤーザムから奪った鎧を身につけていたゼノだった。
「…はっきり言うけど…ホームズは一言多すぎるよ! おまけに、変に石頭だ…」
「はは…まあそれはお前が世間慣れしていないせいだ。俺以上に雄弁な奴なんかいくらでもいる」
頭の痛さで言葉が無茶苦茶になっている。
「…で、サーシャ。てめぇただのお姫様じゃないとは思っていたが予想以上に手のかかる姫様だな!! 昨日は天馬が怖がるとか言って俺の弓を隠しやがるし、一昨日は何深刻な顔で話してきたかと思えば買い物に半日付き合わせた、そして随分前では…」
「ねえホームズ…」
と、何か無茶苦茶まくし立てる奴のところに状況も分からず接近する者がいた。
「うるせぇ、その他大勢はお空の向こうに飛んでいきやが…れ?!」
言わんとすることを全部吐き終ってからその顔を確認するがもう遅い。
「…ぐすん」
……やってしまった。
「ふふふ、女泣かせ〜」
後ろのエリシャが露骨に非難してくる。
「やっぱり…ホームズわたしのこと…ひくっ」
シゲンなどはあまりの可笑しさに吹き出してしまっていた。そしてさっきまで当事者だったサーシャは、事の起こりを掴むのに忙しそうだ。
「わぁぁ、カトリ泣くなこのバカ! 俺はてっきりユニかと思って…ヘブ!!」
必至の弁明を捜すホームズに、何故かゼノの見事な左フックが決まった。十分失礼な言葉だ。
「く…くそ!! 今回のことは水に流してやる」
「待てよ…はは…ホームズ。ククク…お前自身の落とし前は…ッフフフ…どうするんだっははは」
大笑いしながらシゲンは迫ってきた。
「果てしなく気味が悪いから笑うのは止めろ!!」
「いやいやそうは行かないヒヒヒ。まあ、こんな感じで…」

 シゲンの提示した案は、「今回の儲けは全部サーシャ及びカトリの物」とのことである。まあ、そんなことで二人がなだめられるのなら安い物だが、この後ちょっと面倒なことになる…

 

 

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