(そろそろ20人くらい殺ったか?)
ざっと回りに転がっている死体を見て思う。
刃が黒くなったのと関係しているのか、今日は調子がいい。いや、疲れを知らないとでも言うべきだろう。
かれこれ1時間近く戦っているのに全く息が上がらないのだ。
数人いた磨導士の攻撃魔法もライネルがくれた魔法の盾のお陰で俺に防げた。
「くっ…我々は悪夢を見ているのか?精鋭された我が聖騎士達が奴に傷一つ負わす事が出来ないとは…」
聖騎士の一人に泣きが入る。
いや、一人だけじゃない。生き残っている騎士の中で戦意を持っている奴などもういないのだ。
「…逃げ帰りたいのなら好きにしろ。あんた等の力量がこの程度なら何人いても結果は変わらない」
そんな騎士達に見かねたせいか、理性が戻った。
「くっ…」
聖騎士達は見るからに悔しそうな顔をしている。
「二度とウエルトの土を踏むなよ」
俺はそう言い残した後、この場を去ろうとした。
しかし、その時背後から聞き覚えのある声が耳に入る。できれば二度と聞きたくない声だった…。
「相変わらず詰めが甘いな…ジュノーン!」
その言葉と同時に脳天に衝撃が走り、バラバラッと音を立てて仮面がコナゴナになった。
激痛に耐えれず、俺は膝をついた。
いちいち見上げずとも声の主はわかる。
「オルテガ…!!」
そう、やはり俺の予想は正しく、『化け物みたいな人』とはオルテガの事だったのだ。
かつて俺を裏切りガーゼルの下に着いた、背丈2mを越す髭面の熊みたいな大男がそこに悠然と俺を見下ろしていた。
騎士達は『オルテガ様!』と歓喜の声をあげている。
「仮面なんかよりよっぽど素顔の方がいいぜ?潰してやったんだから感謝しな」
(確に…仮面がなかったら死んでたな)
>コナゴナになった死仮面を見て思い、心中で今までの礼を言った。
「しかし…益々男であるのが惜しい顔だな」
懐かしそうに俺の顔を見る。
「ヘッ…同性愛者だったとはな。初耳だぜ」
頭の痛みが引いて来たので、立ち上がろうとした時…
「雷よ!」
頭上に稲妻が落ちてきて、魔法の盾を構える暇もなくまともにくらってしまった。
(くっ!まだ魔導士がいたのか!!)
魔導士は全員倒したと思っていたが…。
俺は再び膝をついた。
「今度は女に生まれ変われよ」
嫌味ったらしく笑いながら言いながらオルテガは愛斧・ドラゴンアクスを振り上げた。
(とうとう俺も死ぬらしいな…。約束も守れそうにない)
不思議と死に対する恐怖なんてなかった。唯、もうサーシャに会えないのかと思うと寂しくなる。しかし、今まで俺は散々命を奪ってきた。ここで未練があると言っては俺に殺された連中に申し訳が立たないだろう。
(サーシャ…悪い)
目を瞑ってそう呟き、死を覚悟した時…
「うぐぁっ!」
頭上でオルテガの痛々しい声が聞こえた。
恐る恐る目を開けてみる…すると、オルテガの腕に一本の矢が刺さっていた。
(一体誰が?)
その答えは案外早く返ってきた。
「相変わらずムチャする奴だな」
後方から聞き覚えのある声が聞こえた。
その声の主は緑髪の青年…
「ルカ…!?どうしてここが!?」
「どうしてここがじゃないでしょ。一人でどうにかなると思ってたんですか?」
ルカの後を追ってきたナロンが呆れた表情をして言う。
「ナロン!?」
何がどうなってるんだ?
「約束通り来てやったんじゃねーか。あれっ?そういや助けはいらないんじゃなかったんだっけ?」
うっとうしい声も聞こえてくる。
「ライネル!?お前、極刑じゃなかったのか!?」
確かコッダに逆らって…
「…お前、知ってて助けなかったのか!?後5分衛兵が来るのが遅かったらマジで死んでたんだぞ!?俺!」
「…悪いな。実は、ライネルを助けれるほど時間的にも精神的にも余裕がなかったんだ。
それはすまないと思ってる」
「ったく、人がこーやって助けに来てやってるというのに…」
一人でブツブツ言っている。
「まぁそれくらいにしといてやれ、ライネル。…しかし驚いたな。まさか『黒き死仮面』
素顔がこんなのだったとは…」
俺の素顔を見て驚いているのは………
ノートン伍長!?
「あんたコッダの軍じゃなかったのか!?」
「…まぁ、男の事情ってやつだ」
目を泳がせて言う。
「なぁ〜にが男の事情だ。サーシャ様をうっかり街娘と間違えたのも男の事情か?」
「言うな!」
ノートンが顔赤らめているのを、ライネルはゲラゲラ笑っている。
「ライネル、もうよしなさい。
立てますか?ジュノーン」
ライネルを黙らせ、膝をついている俺に手をかしてくれているのはケイトさん。
「ケイトさんも来て下さったんですか」
「ええ、貴方に死なれるとサーシャ様が悲しみますからね」
微笑して言った。
「サーシャ…そうだ!サーシャは!?」
「サーシャ様は無事です。私たちがここに来ている事から大体察しはつくでしょうが…戦いは解放軍が勝ちました」
ケイトさんは帝国軍を睨んで言った。
「な、何!?では我々がここにいる理由がないではないか!」
「バカ野郎!仲間を20人も殺られたまんま帰れるワケねぇだろ!」
ザワついた聖騎士達にオルテガが喝を入れた。
「いいか?貴様等も聖騎士としての誇りがあるならここにいるウエルト兵を皆殺しにしろ。俺は『黒き死仮面』を殺る!」
「ハッ!」
聖騎士達が敬礼して勢いよく答えた。
どうやら向こうの方々は話をまとめた様だ。
「20人もよく一人で倒しましたね〜…」
ナロンが死体を眺めて言った。
「じゃあ、相手は残り30人だから…僕達一人あたり6人!?」
ルカが悲鳴を上げた。
「たった6人だ。そのくらいなら俺達でも何とかなる!」
ノートンが剣を抜いて言った。
「そうね。そのくらいの数はこなさないと、ジュノーンに申し訳立たないものね」
ケイトさんがルカの肩をポンと叩き言った。
「…やれやれだぜ。おい、ジュノーン。雑魚は俺達に任せて、お前は敵将をぶっ倒せよ!」
「へっ、言われるまでもねーよ」
俺はライネルに『安心しろ』と言う様に中指を立てた。
なぜだろう…アイツ等が来てから体力が回復した気がする。先程の痛みも感じない。
そうか…しばらく忘れてたな。
これが……仲間だ。
 
自分の危機を救ってくれた戦友達に感謝しつつ、俺はオルテガの前に立った…。

 

 

BACK     NEXT


 

MENU

HOME