|
5
「さっきから気になってたんだが、なんで帝国なのに聖騎士なんだ?気色悪ぃ…」 ライネルが挑発する。 「くっ…、黙っておれば調子に乗りおって!仮にも貴様等一人一人が『黒き死仮面』に匹敵する実力者ならば話は別だが、たかがウエルトの雑兵ごときが我々を倒せるはずがなかろう!」 「そうかい…なら、試してみな!」 言い終えると同時にライネル、ノートン、ナロンが敵軍に突撃。 それを援護せるようにケイトさんとルカが矢を放つ。 いきなりの攻撃に、聖騎士達は反応できなかった様だ。 何人かが最初の攻撃で倒れた。 「ぬぅおりゃぁぁあ!!」 ノートンの気合いの一撃は確実に相手を倒す。 ナロンとライネルも槍のリーチを上手く使い、敵を圧倒している。 これなら俺も安心して一騎打ちに集中できそうだ。 「さぁて、真剣勝負といこうか」 オルテガが斧を構えた。 「真剣勝負なんてできるのか?お前の得意分野は不意打ちだろ?」 さっきのも合わして、過去2回奴は俺に不意打ちをしている。 「油断したてめぇが悪い!」 先制攻撃をしかけたのはオルテガだった。俺はギリギリでかわすと、奴の首を狙って剣を振るった。が、オルテガもそれを読んでいた様で、俺の剣を紙一重でかわした。 パワーや体力ではオルテガ、スピードや技術は俺といった感じだろう。しかし、それは歴然とした差ではなく、実力はほとんど同じとみて間違いない。 (…さて、どうするかな?) 俺は苦笑せざるを得なかった…。
「ナロン、こっちの方にまだ敵がいるから援護して!」 「わかった!」 機動力の高い騎士であるナロンはすぐに僕の援護に来て、敵を一掃した。 1年前、山賊達と初めて戦った時が凄く昔に思えた。 (あの時は何が何だかわからなくて一人で混乱してたんだっけ?) 弓で馬上の聖騎士を井貫つつ少し思い出してみた。 (僕も成長したな…) 山賊数人にてこずっていた自分が今や帝国の騎士を相手にしている。 そして…今、僕達の勝利は目前だ。 「へっ。ただ白い鎧着てるからって聖騎士名乗ってんじゃねーよ。ウエルトにはお前等より何倍も強い聖騎士がいるぜ?」 ライネルさんは最後に残った年輩の聖騎士に言った。おそらくロジャーの事を言っているのだろう。 僕もそれには共感を得た。 しかし、僕は何と無くアイツが嫌いだ。 「ば、バカな…。『黒き死仮面』だけでなく、こんなウエルトの雑兵どもに我が聖騎士部隊が…」 隊長と見られる聖騎士がワナワナと震えている。 「負けるのは当たり前。あなた達は自分の力を過大評価しすぎているのよ」 ケイトさんが冷たく言い放つ。 「だから力を合わせる事なんて考えない。単騎でなんとかしようとする。…そんな戦い方で私達に勝てるとでも思ってたの?」 「そーそー。信頼は力をくれるんだぜ?」 またライネルさんが調子に乗り始めた。 「くっ…。そうだったのか…!?結局、作戦を練らなかった私のミスか…」 まだぶつぶつ言っている。 「ま、悔いるのはあの世に行ってからにしてくんな」 ノートンは最後の一人に剣を振り下ろした。 聖騎士は無念と呟きながら、この世を去った。 結果としては僕達の圧勝だ。 「さてと、ジュノーンの様子でも見に行くか」 ライネルは『アイツが負けるはずねえけどな』と付け足した。 皆頷いて、ジュノーンの元へ向かった。 ……… ………… ……………… 「す、すごい…」 ジュノーン達の戦いを見た第一声がそれだった。 二人は僕達では目で追い掛けるのがやっとの様なスピードで戦っていたのだ。 しかも、それでもって二人は無傷。 ばかでかい斧を軽々と自在に扱う敵将…音速と言っても過言ではない剣さばきで反撃するジュノーン。そして、お互いがそれをギリギリで回避している。 その戦いは僕達とはまるで別次元だった。 改めて彼の強さを実感した。 「あ、アイツってこんなに強かったのか?」 ノートンが信じられないという様な顔をして言った。勿論、ケイトさんやライネルさんも同じである。 「いえ、あんなのを見たのは僕達も初めてですよ。ジュノーンさんが本気になるとここまで速いとは…」 ナロンが憧れの眼差しで見ている。 「…皆、忘れてない?敵将はそのジュノーンと互角なのよ?」 苦笑いをしながらケイトさんは近くにあった木にもたれかかった。 「あれでは私達は加勢できないわ。悔しいけど次元が違いすぎる」 その後『どんな練習したらああなるのか訊きたいくらいね』と冗談混じりで付け足した。 結局僕達はジュノーンの勝利を祈る以外は何もできなかった……。
「聖騎士軍団は全滅みたいだぜ?」 一旦攻撃の手を止め、ルカ達が来たのを見て言った。 「ふん…情けねぇ。たかがウエルトの兵も倒せんとは。 まぁ、あんな奴等が死んだところで何も変わらなぇ。 お前さえ倒せれば残りはカスだ」 …確に、俺が負ければライネル達ではどうしようもない。 いや、こいつなら一人で解放軍を全滅させれるかもしれない。 だから…負けるワケにはいかない。 例えこの命を捧げようとも……。 (まぁ…倒せる事は倒せるかもしれないけどな…) 俺が決意に苦しんでいると、オルテガは今までとは少し違う雰囲気で話した。 「ったく、お前なんかいなきゃよかった。ジュノーン」 微笑しながら言う。 「無茶言うな」 「はは…そうだな」 …?いきなりどうしたんだ?話し方に殺意がない。 「俺はお前が羨ましかった」 オルテガはいきなりワケのわからない事を言い始めた。 「あ?なんで? ソフィアではお前の方が俺より評価されてただろ」 俺の評価は最低クラスで、上の奴等からは煙たがられていた。 「確に…隊長や軍師のような奴等からはな。 でも、それは俺が扱いやすかっただけだ。 忠実な犬の様にな。 命令された事はどんな卑怯な手を使ってでも成功させてたからな」 微笑が苦笑に変わっていた。 「それはそれで良い事だと思うけどな。俺には真似できない」 「しかし、忠実な部下より孤独に生きてる部下の方が好む人もいる
」 「…そんな奴いたか?」 「レシエ公女だよ。あの人だけはお前を誰よりも心配していた」 「………」 その名前が出て、胸が痛くなった。 「俺はお前と仲が良かったからいつも相談されたよ。俺の気持ちなんて全く気付かずな。 お前の事を話してる時の公女が一番幸せそうだった…。 俺には…俺にはそれが許せなかったんだ!」 言葉に再び殺意が戻った。 「だから俺は帝国の誘いに乗った!」 「…なるほどな。やっと、お前に裏切られた理由がわかったよ。 それでどうする? 俺を殺すか?」 「願わくばな!」 「そうか…」 何故だかわからないが、オルテガが可哀想に見えた。 (だが、許すワケにはいかない。 お前が裏切った事でレシエ公女がどれだけ悲しんだと思ってるんだ?) 俺は地面に剣を刺した。 「どういうつもりだ?勝負を捨てたか?」 「殺したいんだろ?ならさっさと斬れよ」 その言葉にオルテガより先に反応したのは観戦していた仲間達だった。 「バカ!てめぇ何考えてるんだよ!!」 ライネルが叫ぶ。 「は、早く剣を取って下さい!ジュノーンさん以外にその人を倒せる人はいないんですよ!?」 ナロンも続いて叫んでいる。 (うるせぇよ。こっちにだって考えがあるんだ) 仲間達がぎゃーぎゃーわめく中、オルテガが歩みよって来た。 「なら、お言葉に甘えてそうさしてもらうか!」 その言葉を言い終える頃には俺の脇腹にはドラゴンアクスが刺さっていた。 「か…はっ」 大量の血が俺の脇腹から流れ出し、緑色の草を赤色に染めていった。 「バカめ!その強靭な鎧なら俺の攻撃に耐えれる等と思っていたらしいが、忘れたか!? 俺の得意技が『風水の技』ってのをよ!!」 俺は遠のく意識を必死で繋ぎとめながら、左手でオルテガの腕を強く掴んだ。 「お前こそ…忘れてるんじゃ…ないのか?」 「…?」 「俺が…『死生の技』もできる事を…な」 「し、しまっ…!!」 「お前も…死ぬんだ!」 俺は素早く右手で剣を地面から抜き、次の瞬間には黒い刃がオルテガの胸部を貫通していた。 「うぐ…っ!やっぱり…大した奴だ。ジュノーンは…」 心臓は外れていたらしい。が、そう長くもたないだろう。お互いに。 「お前も…な」 「ありがとよ…。それと……すまなかった」 オルテガは俺の耳元でそう呟いて倒れた。 俺も後を追う様に倒れ、目を瞑った。 「ジュノーン!」 仲間達が俺の名を叫んでいる。 「ジュノーン!ねぇ!目、開けてよ!!!」 …?仲間達の声に混じってサーシャの声が聞こえた。 来てくれたのか…。悪いけど、もう目が開かない。 「お願い!死なないでよぉ! 約束したじゃない!!祝勝会に出席するって!! だから…だから…っ!!」 悲痛な叫びが聞こえてくる。 約束か…守りたいのは山々なんだけどな…。 この出血じゃ無理だ。 「サーシャ、どきなさい。彼をアイビスに乗せて王宮に運ぶから。エンテ様なら何とかしてくれるかもしれないわ。…手遅れかも知れないけど」 知らない女性の声も聞こえる。俺の傷口を見ていっているのだろうか? それより、アイビスってなんだ?
「えっと…皆さん、彼をアイビスに乗せるのを手伝って頂けませんか?できるだけ揺らさない様に」 知らない女性がライネル達に声をかけたのだろうか? 俺の体は持ち上げられ、アイビスという物に乗せられた。 「ジュノーン…お願い。生きて…」 サーシャのその言葉を最後に、俺の意識は途切れた……。
BACK NEXT
|