「サリア城綺麗に修復されてるよね〜。前はただの廃墟だったのに」 サーシャは王の間から出るなりそんな事を呟いた。 「それより、なんで早く着き過ぎたからって俺達がそんな事しなきゃいけないんだ?」 サリア城に行き、サリア王達に挨拶をしに行く…それだけで終るハズだったのだが、何や らブラードの様子がおかしいというので、調査に行ってほしいと国王が依頼してきたの だ。 ただ祭りを楽しみに来た俺達には何の関係もない。 それなのにサーシャは迷う事なく依頼を受けたのだ。 「だって、暇なんだからいいじゃない。 予定より1週間も早く着いちゃったんだよ?お祭りの準備すら手伝えないんだし」 「…だから、セネーからも歩いて行こうって言ったのに」 さっきとは正反対の事を言ってみる。 「ジュノーンが山賊に襲われるのもバカらしいから飛んで行こうって言ったんじゃな い!」 …ごもっとも。 「でも、危険が伴うんじゃないのか? サーシャにもしもの事があったらどうするんだ」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ♪ だって私にはジュノーンがいるんだもん♪」 …それはどういう意味だ? なんだか利用されてる気がしてきた。 「俺がいるにしろ、わざわざ自分から危険に飛込む必要はないだろ。 大体こんな事はサリアの天馬騎士団の仕事じゃないのか?俺達通りすがりの旅行者には関 係ない」 正論を言ってみる。 すると… 「えぐっ、えぐっ、うるうる…あんまりいぢめると、泣くよ?」 うっ…しかし、本当に泣くのがサーシャのスキルだ。 以前それで苦しめられた挙げ句、ルカと大喧嘩するハメになったのだ。 「わかったよ!行けばいいんだろ!行けば!」 結局俺の負け。 「ほいじゃあ、出発は明日ね♪ お城で泊めてくれるんだって♪♪」 …騙された。 行くのは別にいい。何も起こらなければ…それでいい。 ………………… …………… ……… 翌日… 「ふわぁぁぁぁ…」 さすがに昨日は疲れたな。 何せサリアに来るのは初めてだし、国王達に挨拶するというのが、大変精神的に疲れた。 ああゆう堅い挨拶は嫌いだ。 そんな俺が近衛騎士隊長なのだから、我ながら笑ってしまう。 それに、サリアに着くなり小娘に斬りかかられるし…。 「何やってるの?」 その小娘、フラウがたまたま通りかかったらしく、俺の魂の叫び(アクビ)を聞いて、首 を傾げている。 「ん?これはな、俺の心が風に乗って飛んでいく為の儀式だ」 「ぇ…何だかヤバそうな儀式じゃない?」 「うるさいな」 「普通の人から見たら、かなり怪しい部類の人だよ?」 「いや、少なくとも俺と同調できそうな奴は近くにいる」 「…誰よ?その奇特な人」 「サーシャだ」 「うん?何か呼んだ?」 うわっ…タイミング悪くサーシャもこの場を通りかかり、俺達の会話を聞かれてしまっ た! 「いや、何でもない。サーシャがカワイイとかそんな話は全然してないからな」 「え?え?ホント?カワイイ?」 と言いつつはにかむ。 「はぁ…何だかどっちも似た者同士って感じだね」 フラウが呆れた顔で溜め息を吐く。 「失礼な!」 これと似ていたら俺の人生かなりヤバいぞ? 「ん?何が失礼なの?」 サーシャが少し怒った口調で言う。 「…なんでもない」 もはや怒る気力も残っていない。 「ところで、ジュノーン君達って、今日ブラードに行くんでしょ?」 「ああ。そうだけど?」 「私も一緒に行ってあげる」 …この小娘はいきなりとんでもない事を言う。 「断る!」 即答する。 いつまた命を狙われるかわかったもんじゃない。 「え〜、別にフラウが一緒でも問題ないじゃない」 サーシャが抗議してくる。 「あ、もしかしてまた斬りかかると思ってるんでしょ?安心して。昨日みたいな事はもう しないから。 あんなに怒られるのはもうコリゴリ」 「あはは♪そういえばフラウ、昨日マーテルお姉さまに怒られてたよね」 …どうやらマーテルがちゃんと『躾』てくれている様だ。 「いいでしょ?私はレオン叔父さまに会いに行くだけだし」 「…?まだレオンハート公はブラードにいるのか? アイツは元々セルバの太守だろう」 「そうだけど、町の皆がレオン叔父さまにブラードに居てくれってお願いしたんだって。 だからシロウ君がセルバ太守のお仕事をしてるの。 で、ジュノーン君はレオン叔父さまと知り合いなの?」 シロウ?誰だそれわ? まぁ、どうでもいいが。 「ああ。 俺が不覚にも賊に囲まれた時があってな。どうやって無傷でやり過ごそうかと考えてた 時、たまたまレオンハート公が通りかかったんで助けてもらたんだ」 「へぇー、ジュノーン君が助けられるとは意外ね。あんなに強いのに」 どうやらフラウも俺の強さだけは信頼してくれている様だ。 「いや、俺一人でも何ら問題はなかったのだが…」 「それって、ただの言い訳でしょ?」 くっ…この小娘はいちいち勘に触る言い方をする! 「いや、違うぞ? 紛れもない事実だ! まず、一人目をだな…」 「…それで、何時出発なの?」 その上無視かっ!? 俺の素晴らしい武勇伝を語ってあげようというのに…。 「今から丁度2時間後だよ?」 サーシャも俺を無視し、フラウに伝える。 「…遅れたら放って行くからな」 「はいはい」 生意気小娘は軽く流して言った。 ……… …………… ………………… 「遅い!」 俺とフラウは声を合わせて言った。 「ちょっと、姫の教育がなってないんじゃないの?」 「知るか!俺はサーシャの教育係じゃない!」 …そう、結局遅刻しているのはサーシャだ。 しかも30分遅れてもまだ来る気配がない。 「じゃあ、ジュノーン君はサーシャの何なワケよ?」 「え…?」 その質問の答えは俺にはわからなかった。 「ただの護衛兵なワケないよね。もっと深い関係なんでしょ?」 深い…?どこからが深くてどこからが浅いんだ? そんなの俺にはわからない。 「…さぁな」 「さぁなって!それ本気?」 「本気も何も、本当にわからないんだから仕方ない。 そんな事より、ブラードの何がどうおかしいんだ?」 「ちょっと、何勝手に話を終らせてるのよ!…まぁいっか。サーシャに直接訊けばいいワ ケだし…」 なに!? それは答えによって、俺のは死刑宣告にもなり得るぞ!? なんとしてでも止めなければっ!! 「お、おい…」 「えーと、ブラードの何がおかしいか…だよね?」 くっ…この小娘め! 「いや、そんな事より…」 「ここ最近ね、ブラードに行った商人達が行方不明になのよ」 …完全無視な様子。 「レオン叔父さまからも連絡が途絶えて、調査に行くにもヴェーヌお姉さまはエリアルに 行ってるからいないし…なら、私とマーテルお姉さまの2人で行こうって事になったのは いいけど、マーテルお姉さまはリシュエルに首ったけ。『また今度にして♪』って言っ て、行く気0。 そんなワケでジュノーン君達と一緒に行く事になったのよ」 「要するに…全く情報が無いんだな?」 「まぁそういう事ね。 あ、サーシャ来たよ」 フラウが指差した方向を見ると、かなり焦って身支度をしたであろうと思われるウエルト 王女が走ってこちらに向かっている。 「ごめん…。ちょっととお話してたら時間過ぎちゃった」 息を整えながら言う。 「あのねー、私らもう1時間近くも待ってるのよ?」 「ホントにごめん…。」 深々と頭を下げる。 「まぁ遅刻はいいとして…。 サーシャ、剣はどうした?」 サーシャの腰回りを見ると、何か武器を持っている様子はない。 「あ…っ!部屋に忘れた! ごめん!!もうちょっとだけ待ってて!!!」 回れ右をしてサーシャは城へと向かった。 「…先が思い遣れるんだけど」 フラウが頭を掻いて言った。 「同感。 ところで、エリアルに行ったヴェーヌって人は強いのか?」 『エリアルに行った』というのが引っ掛かる。確かエリシャという雷神も行ったハズだ。 「うん。スッゴク強いよ!天馬騎士を束ねる隊長だもん。ヴェーヌお姉さまならジュノー ン君より強いかもよ?」 「…それは楽しみだな」 強者達がエリアルに集まっている…。 一体そこで何があるんだ? 不安だ。 過去、これ程不安になった事がない…。 「お待たせ!ジュノーン、フラウ!」 俺の心中をよそに、サーシャは無邪気な笑顔でやってきた。 ちゃんと武器を持って。 「よし、行こうか」 俺は竜、サーシャ達は天馬に乗り、ブラードへと空を駆けた。 |