3章 盗賊連盟と巨人族…そして再会
俺達はあれからすぐに出発し、レダの古城へと向かった。 リグリア塔もブラードと同じ様になっているのかと思えば、そうでもないみたいだ。 (何故だ…?) 謎が謎を呼ぶ。 今の俺達に解る事なんて一つもない。 それより気になる事が一つ…レオンハート公がサーシャに俺の事を詮索している様子。 かなり気になる…。 もし、あの祝勝会の事を言ってしまったならば……あまりそうなった事を考えたくない。 俺達はエリアル洞窟を抜け、レダの古城前に着いた。 そして俺達が古城跡に入った。 瓦礫と化した城内を俺達は歩いていった。 城を吹き抜ける風が虚しく鳴り響く。 「私達、ここに来るのは2回目なの」 サーシャが俺に言う。 「あの時は大変だったよね〜。 クラニオンがいきなり襲ってくるし…」 「それに暗黒兵もいきなり現れたな」 フラウとレオンハート公も会話に入ってくる。 「あの時はさすがのホームズも慌ててたよね♪」 サーシャはクスッと笑いながら言う。 それに続いて二人も笑った。 …ホームズって例のサーシャの義兄か? 「よし、そんな思い出話は終りにして、手分けして城の中に手掛りとなりそうな物を捜そ う。何か見付けても一人では何もするな」 レオンハート公が注意しろ、と付け足した。 俺達は無言で頷く。 30分後… 「別に何もないわね」 フラウがつまらなさそうに言う。 何事も無く終ったか、とホッとしたその時 「………っ!!」 城の周りに殺気を感じた…! それも物凄い数だ。 「マズイ…!城外に出ろ!早く!!」 俺はサーシャの手を引き、外に出た。 すると、そこには…おびただしい数の盗賊、山賊達が城を囲んでいた。 「これがエリシャさんの言ってた…盗賊連盟?」 サーシャが顔を引きつらせ呟く。 数が多すぎる。 「けっけっけっ…バカな奴等だぜ。 わざわざ俺達のアジトに来るとはな!」 盗賊の頭っぽい奴が言った。 「俺達が相手をするのもめんどくせぇ。 新たに入った兵隊クン達に戦ってもらおうか…!!」 (兵隊?) すると、現れたのはイストリアの鎧を着た騎士団達だった! しかも、ブラードの人々と同じ様に、顔を紫色に染め、狂った様に『殺ス』と繰り返し呟 いている。 (やっぱり…俺の計算通りイストリアの事件とブラードの事件は繋がっていた様だな) 「おのれ…」 レオンハート公は曲刀を抜いた。 (それにしてもえらい数だな) やっぱり首を突っ込むべきじゃなかった。 今更後悔しても遅いのだが。 「レオンハート公とフラウはサーシャを死守してくれ!」 「貴公はどうする気だ!?」 「俺が全員倒す」 いつもの事だ。 「ジュノーン、無茶はやめて!!」 「誰かが無茶しなきゃいけないんだよ!」 『魂喰い』を抜いてサーシャに言い聞かせる。 イストリア騎士団の数は10人程度。 そのくらいの数など何とでもなる。 問題はこの盗賊達だ。 一人一人は弱いが、この数では苦しい。 目測でも100人以上はいる。 「皆で力を合わせた方が…」 「サーシャ、俺は君の護衛だ。 大切な姫君を戦わせるワケにはいかない。 ま、俺を信じろよ」 「………」 サーシャは心配そうに見つめるだけで、頷いてはくれなかった。 「殺れ!」 盗賊がそう叫んだと同時に、イストリア騎士団が襲いかかってくる。 「さぁ、『魂喰い』よ…魂なら好きなだけ喰わしてやるぞ!」 そう叫ぶと同時に俺 は一番近くのイストリア騎士を斬り殺した…。 (凄い…これが戦ってる時のジュノーンなの?別人みたい…) イストリアの騎士達に真っ正面から斬り込みに行ったかと思えば、次の瞬間にはもう二人 が地面に這いつくばっていた。 相手が剣を振るっても、全くかすりもしない。 それは、普段冗談を言ったりして私を笑わせてくれている人とは思えなかった。 『戦鬼』という呼び方が正しいかもしれない。 「うそ……!?」 フラウが見とれる様に彼を見つめていた。 『黒き死仮面』という異名にも納得できる。 「王女、フラウ、構えろ!!盗賊共が来るぞ!!!」 イストリア騎士団だけでは私達を倒せないと思ったらしく、盗賊達が突撃してきた。 「迎撃しろ!」 レオンハート公が弓で敵を射貫ながら言う。 私達は背中を合わせて四方の敵に応戦した。 (…でも、数が多すぎる…!!) とても4人で倒せる数ではない。 (ジュノーンはどこ?) 反撃しつつ彼の姿を捜した。 すると、ジュノーンの周りにはイストリア騎士達の死体が無惨に転がっている。 (もう倒したの!?) 「ジュノーン!」 「今行く!」 ジュノーンが私の声に気付き、こちらに加勢に来ようとした時…彼の前に斧を持った巨人 が立ちはだかった…。 「おいおい、なんだよこのデカブツは…!?」 イストリア騎士達を全滅させたかと思うと、次はオルテガよりもデカイ奴が俺の行く手を 阻んだ。 顔には刺青が入れてある。 「かっかっかっ、そいつは巨人族さ! アンタがどれだけ強いかは知らないが、そいつに勝てる奴はいねーぜ!!」 俺の近くにいる盗賊が勝ち誇った様に言う。 (巨人族…?) 巨人族はもう何百年も前に絶滅した種族じゃないのか? 「イストリア騎士達の仇をとってやりな! ギガントス!!」 どうやらこの巨人はギガントスという名らしい。 イストリア騎士達と違って、こいつは操られるんじゃなさそうだ。 「お前、俺に命令するな!俺に命令していいの、帝王様だけ!」 巨人族は威圧して盗賊に言った。 しかし、その口調はカタコトというか、まだ覚えたばかりの言葉の様なしゃべり方だ。 (帝王様?今の世に帝国を名乗る国は無いぞ?) 「わ、悪かったよ、ギガントス。 その黒い騎士はお前に任せるぜ?」 「任せろ。俺、こんな奴に負けない。お前、あの3人倒せ」 巨人はサーシャ達を指して言った。 盗賊は黙って頷いてサーシャ達の元へ向かう。 (好き放題言ってくれるじゃないか…!) 「…おい、ただ体がデカイだけで俺を倒せると…思うなよ!」 俺は先制の一撃を放った。 ガキィィン!! 巨人の斧に俺の『魂喰い』を受け止められた。 (なっ…!?) 俺の動きに付いて来た? 「俺、デカイだけじゃない。お前、俺に勝てない」 くっ…確かに俺のスピードに付いてこれる奴はそうはいない。 「死ね」 巨人はそう呟くと、斧を振り下ろした。 俺はそれを間一髪で避ける。 (…!?) 巨人の斧が突き刺さった地面は、地割れの様に亀裂が入っている。 (くっ…パワー勝負では話にならない!) マズイな…こいつは本気にならないと勝てそうにない! 「空に舞う風の精霊達よ…汝の力で敵を刻め…!」 俺はそう呟きながら、巨人に斬りかかる。 「俺相手に、真っ正面から来るのは、バカだ」 予想通り、巨人は俺をカウンターで討ち取ろうと、斧を振り上げた。 確かに普通に突っ込んだならば、真っ二つに斬られるだろうが… 「喰われちまいなっ!」 俺は奴が斧を振り下ろす瞬間に『烈風の技』…すなわち、自身の中で最速且それなりに破 壊力のある技をくりだす。 それと同時に鈍い音と斬ったという最高の感触が『魂喰い』の柄を伝って俺の手にくる。 (勝った…!!) そう確信したその時、俺は宙を浮いていた…。 (え…?) 巨人が俺を投げ飛ばしたのだ。 (なんで立ってられるんだよ…!?) 考える暇など与えられず、俺は廃城の壁に叩き付けられ、老朽した壁は瓦礫と化して俺に 降りかかってきた。 (そんな…バカな) 俺の意識が遠くなっていった時… 『困るな…あんな奴に苦戦されては…!!』 薄れていく意識にそんな言葉が響いた… 「ジュノーン!?」 私は彼が瓦礫に埋もれたのを見て、泣きそうになった。 でも、今は泣いている時ではない。 こちらの一番の強者がやられたのを確認してから盗賊達は一旦攻撃の手を止めた。 「な…何なのよ!あの巨人は!!」 フラウが悲鳴にも近い問いを盗賊に投げ掛ける。 「巨人族さ…!!」 丁寧に盗賊は答えた。 「巨人族!?あれはとうの昔に滅んだハズだ!」 レオンハート公が問い返す。 「詳しい事は知らねーよ。帝王様が連れて来たんだからよ」 「帝王?帝王とは誰の事を言ってるの?」 涙を奥に押し込め、私も質問した。 「お前達に言っても意味はない!もう今から死ぬのだからな!!」 盗賊は剣を振り上げた時、女性の声が盗賊の後から聞こえた。 「えぇ〜…私も聞きたいなぁ…帝王が誰なのか」 声の主は、銀髪の魔導士…私もよく知っている人物である。 「エリシャさん!」 安堵のせいか、今まで溜めていた涙が流れ始めた。 彼女の背後にはエリアルの騎士達も構えている。 「サーシャ、私達が来たからにはもう安心よ?」 そして、盗賊達を睨み… 「あんた達…よくもまぁ私の友達を集団でいじめてくれたわね…!! 後悔させてあげるわ!!!」 バチバチッとエリシャさんの周囲に帯電している。 「大いなる雷よ…。 愚かなる者を砕け…!」 彼女が呪文を唱えると、巨大な雷が盗賊に落ちた。 悲鳴を上げる前に盗賊は黒こげになっていた。 彼女の攻撃を始め、エリアルの騎士達もなだれ込む様に盗賊達に斬りかかった。 「フラウ、早く構えなさい!」 天馬に乗った女性がフラウに喝を入れる。 「ヴェーヌお姉さま! どうしてここに!?」 「…それはこっちのセリフよ! でも、話は後! 先に敵を倒す事に専念しなさい!」 「はい!」 「それと、あっちにサンがいるわ。 フラウは彼女と戦いなさい。その方がいいでしょう?」 ヴェーヌはフラウに微笑みかけた。 「サン…?サンもいるの!? わかった!ありがとう、お姉さま!」 フラウはサンの元へと急いで飛んで行った。 それから他にはセネト王子もいる。 彼は私にハンカチを渡して、涙を拭く様に指示する。 その後、 「こうやって貴女達を助けるのは2度目ですね」 と微笑みかけてきた。 「ありがとうございます」 私は愛想笑いで返す。 確かにそうである。 しかも前と同じ場所…。 しかし、私は今彼とゆっくり話している程落ち着いてはいなかった。 「あのっ…それよりジュノーンが…!!」 確かに形勢は逆転した。数は少なくとも、皆歴戦の兵だ。 数だけの盗賊が敵うハズがない。 しかし、ジュノーンは瓦礫の山の中に生き埋め状態。 彼等が救援に来たからと言って、喜んでいられる状況ではない。 「ジュノーンって、さっき巨人と戦っていた人の事だよね? それなら大丈夫だ。 彼をよく知る人が助太刀に行ったよ」 (彼をよく知る人…?) 誰? その時私の中に、とてつもない不安感が生まれたのだった…。 |