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(はぁ……)
 サーシャは小さくため息をついた。
 彼女の膝の上でリュナンが寝息をたてていた。
 結局あの直後、リュナンの体がぐらりと揺れたかと思うと、サーシャにもたれるように倒れてきたのだ。公子はそのまま王女の膝頭に頭を載せる形で眠ってしまった。
 この体勢では人を呼びに行くこともかなわない。そして……
 そして、公子の寝顔を見てみたい。そんな不謹慎なことをサーシャは考えてしまい……今に至るわけである。


(さっきはドキドキしちゃった……)
 公子の頭の重みを感じながら、王女は胸の中で呟いた。
(……実は今でもドキドキしてるけれど)
「……」
 リュナンの寝顔を見ているうちに悪戯心がわいてきた。白く細い指先でそっとリュナンの頬に触れてみる。こんな些細な仕草でも胸が激しく高鳴った。
「ん……」
 公子の瞼がピクッと震えた。
(あっ……!)
 驚き慌ててサーシャは手を引っ込めた。
「……」
 そのまま緊張してリュナンの覚醒を待つ。
 しかし公子はいっこうに目覚めなかった。規則正しい寝息が聞こえるばかりだ。
(……寝言だったみたい)
 王女は小さく安堵の吐息を漏らした。
「ね、もしかして……」
 リュナンが完全に寝入っていることをもう一度確認して、今度は声に出して呟く。
「……もしかしてリュナンさま……わたしのこと好きなの?」
 公子の髪を撫でながら訊いてみた。
 いらえはない。
「こら……『好きだよ』って言ってみなさい」
 サーシャはリュナンの寝顔に向かって囁いた。


 人々の笑い声と演奏が時折、風に乗って聞こえてくる。
 けれど、ここは不思議なくらい静寂な空間だった。
 月がやわらかな光でふたりを照らしていた。

 

 

<FIN.>


[13-09-22]

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