盟主としてサーシャ王女を戴き、リュナン公子という歴戦の将に率いられたウエルト解放軍は、破竹の勢いで王都に向かい進撃した。戦えば勝ち、彼らの士気はいや増すばかりだ。
とはいえ、連戦の疲れを癒すことも大事である。精神力だけでは疲労や怪我をカヴァーできないからだ。
そんな折、リュナンたちはマーロン伯爵から進軍の途上に温泉地があると聞いた──
「おや、ここは……」
リュナンが呟いた。
「あら、ここって……?」
傍らでサーシャも首をかしげる。
互いの独白を聞き、二人は顔を見合わせた。
「サーシャ」
「ねえ、リュナンさま」
同時に言葉を発する。
一緒に苦笑した後、先に言うようにリュナンがサーシャを促した。
「リュナンさま、ここのこと、覚えてます?」
サーシャが訊いた。
「ん。何だか見覚えのある場所だ」
リュナンが頷く。
「ずっと以前──僕がウエルトを訪れたとき、ここに来たことがあるような……?」
記憶を辿る目つきでリュナンは言った。そのセリフにサーシャはポンと両の手を打ち合わせ、
「やっぱり! 私もそのような気がしていたの。まだほんの小さな頃だったから、よく覚えてないのですけど──とても楽しかった印象があります」
「僕だって十歳くらいだ。まるで夢の中の出来事のような朧げな記憶しかないよ」
リュナンが不得要領な表情で言った。
「じゃあ、一緒に思い出してみませんか? 二人分の記憶を繋げれば、何があったかはっきりするかも」
サーシャが楽しそうに提案した。
「いいよ。それと──だったらオイゲンも呼ばないか。彼も僕の守り役として一緒にいたはずだ」
オイゲンなら当時大人だったわけだし、記憶も鮮明だと思われる。そう考えてリュナンは言った。
すると、サーシャは首を振った。
「だーめ。二人で思い出すの。だって、私たちの思い出なんですもの」
甘えるような声で王女は言った──