サーシャFC
月光

1

 着替えもせずベッドの上に寝転がった。
 はしたないとは思うが、今は何かをする気になれなかった。
(まだ体が火照っている……)
 王女は気だるい気分で考えた。
 初めて口にしたワインはとても強烈だった。頭の中がグルグル回っている。
 枕を両腕でパフッと抱きしめた。
(ケイトがいなかったから……つい調子に乗ってしまったわ……)
 先刻の宴で守役の不在を見計らって、王女はワインを飲んだのだ。その時は悪戯っ子の気分を満喫できた。しかし、今ではすっかり後悔していた。
(みんな……大人の人たちはどうしてあんなものが好きなのかしら。甘くもないし、苦いだけなのに)
 そして『飲酒は大人になってから』というラフィンやケイトのお小言を思い出した。
(やっぱり目上のひとの言うことには一理あるのね……)
 と素直に感心し、自分の迂闊さにため息を漏らした。

(ラフィンといえば……今、どうしているかしら?)
(あのひとと……ずっと一緒にいるのかな……)
 オレンジ髪の美女の貌が脳裏に浮かんだ。
 彼女とラフィンが一緒に宴を脱け出したことを思い出す。
 いや、二人が示し合わせて姿を消したのかどうか、実のところ不明なのだが、サーシャはそのはずだと決め付けていた。
(二人は仲直りはできたの?)
 ラフィンは生真面目で……その分とても口下手な人だから、説明に失敗して、状況を悪化させているかも知れない。
(……そうだとしたら、私が代わりに説明してあげる……というのは、さすがに余計なお節介でしょうね。怒られてしまいそう)
 そもそもラフィンは立派な大人であり、自分のような小娘の助力など無用だろう。サーシャは自らの発想に苦笑した。

 ……そして、(彼の役に立ちたい)と強く願う自分の気持ちに、王女は戸惑いを覚えた。

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