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いつだって自信に溢れて決断しているわけではない。
自分の選択は正しかったのか、時として疑念にとらわれることもある。
ラフィンはため息を漏らした。先刻から何度目だろう。
「……」
空耳とは分かっているが、それでも胸にそこはかとない痛みを感じる。
自分はどうしてあの時『飛竜の笛』を手に取らなかったのだろう。
漠然とした理由は分かっている。
(竜騎士に戻れば、今の俺ではなくなってしまう……そんな
だが、それは元の自分に戻ることでもある。かつてバージェの空をガルダとともに駆け巡っていた頃の自分に……
(なぜ、そうなることを恐れる必要がある? 本来の自分に立ち戻るだけなのだぞ?)
ラフィンは瞑目した。
これまでの日々が脳裏に蘇る。
……かつて国を追われ、父の縁を頼りにウエルトのヴェルジェ伯の元へ逃げ込んだ。
五賢王の一人ロファールの指導のもと、戦乱に明け暮れる大陸とはまるで別世界のような平和と繁栄を、当時のウエルト王国は謳歌していた。
以来五年の月日をウエルトの地で過ごしてきた。
(俺は……ウエルトの平和と安楽に馴れてしまったのだろうか)
ラフィンはひとりごちた。
(それゆえ、帰郷への渇望が薄まった? つまり厭戦気分の虜となっているのか?)
彼は直ちにその考えを否定する。
(いや、そうでは無いはずだ。現に俺はウエルト王国の将として、大陸遠征軍に参加している。戦いに怖気づいているわけではない)
(だが、それではなぜ……)
なぜ自分の中でウエルトへの想いが
胸が
(……竜騎士に戻らないということは、ガルダを見捨てるということで……)
ラフィンは子竜の頃のガルダを思い出した。
ほんの小さな子供の頃から彼らはずっと一緒で……友達だった。
(あいつ、見捨てられたと感じて、俺を怨んでいるだろうな……)
彼と
(すまない、ガルダ。俺のことは忘れて、もっと誠実な主人と巡り合ってくれ……)
「……」
再びガルダの鳴き声が聞こえたような気がした。
ラフィンにはそれ以上、思索に
「……?」
前触れ無く視界を閉ざされた。
何者かの手が彼の眼前を覆ったのだ。小さな柔らかい手だった。このような稚気たっぷりの振舞いをする人物の正体には心当たりがある。
(というよりも『彼女』くらいしかいないか……)
ラフィンはひそかに苦笑した。
その繊手のひんやりした感触を愉しんでいると、
「ラフィン」
彼の名を呼ぶ声がした。