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連戦中のウエルト軍に休養は必要だ。
リュナン達と協議し、夜会の翌日は交代で自由行動の時間をとることになった。
サーシャは喜び勇んで市街の散策に出掛けることにした。祖国の王宮にいたのでは味わえない楽しみといえる。とはいえ王女である以上、もちろん一人でフラフラと歩き回ることは許されない。守役たちも一緒だった。ケイトとラフィン、ノートンといった面々だ。
かれらは海沿いの小路を連れ立って歩いていた。頭上には澄んだ青空が広がっている。
サーシャはとても楽しそうだった。今にも鼻歌を鳴らしそうな浮かれようだ。
「しかしサーシャ様も物好きですねえ」
ノートンが呆れたような声を出した。その視線はサーシャの手にした包みに注がれている。かれらは古びた小さな骨董店から出てきたところだった。サーシャの荷物はそこで購入したものだ。
「さっきも申し上げましたが、自分は贋物だと思いますぜ、それ。どうしてソフィア大公国の特産品がこんな港町にあるんです?」
ノートンの当然の疑問に、しかしサーシャはびくともしなかった。
「あら、でもラフィンは本物だって言ったわよ。ね、ラフィン。これって『飛竜の笛』なんでしょう?」
そう言って、じっとラフィンの顔を見つめる。
「ええ、まあ」
ラフィンは曖昧な表情で頷いた。確かに本物の『飛竜の笛』だ。しかし、これは正規のルートで入手したものではない。いわば横流し品である。果たして竜を呼び寄せる効果があるかどうか疑問だった。
(笛を吹いても竜がこなければ、きっとケイトに『無駄遣いをして!』とお説教されるのだろうな)
ラフィンはそんなことをこっそり考えた。この実直な守役は王女に諫言することに遠慮を感じない性格なのだ。それゆえ、将来の王家の後継者に対する教育係として最適の人選といえた。
(だが……その時は俺も王女と一緒にお小言を言われるのだろうか)
そんなことがふと気になった。そっとケイトの顔を盗み見る。彼女と視線が衝突した。ラフィンはぎょっとなった。
(もしやケイトは俺の内心に気づいている?)
冷静に考えればそんな筈はないが、ラフィンは思わず首を縮めてしまった。
「……?」
ケイトがきょとんとした顔でラフィンの百面相を眺めた。
「ほら! ラフィンも同意してくれているわ」
青年の内心も知らず、サーシャが嬉しそうに笑い出した。
「どう、ノートン伍長」
くるりと踊るように身を翻すと巨漢の重騎士の顔を見上げた。
「ラフィンは昔、竜を扱う専門家だったのだから、『飛竜の笛』に関して彼の言うことに間違いは無いのよ?」
まるで我がことのように胸を張って自慢する。
「はいはい、サーシャ様のおっしゃる通りですね」
ノートンは両手を挙げ、降参のそぶりをみせた。目を細めて微笑を浮かべている。主君の姫君であるが、サーシャは無邪気な妹のような印象で、年長者としてそんな彼女が可愛くてたまらないといった風情だ。
もっとも、この場に居合わせた者達は、多少の差異はあれ皆似たような心情の持主だったが。
何といってもかれらはサーシャからカリスマ支援に加えて通常支援も受ける人達ですから(笑)。