お昼にしましょ

by てんま


 

 

 紙袋やらバスケットやらたくさん荷物を抱えて、サーシャがトコトコ歩いてくる。
 荷物を落とさないことにばかり気を遣っているらしい。前をよく見ていないようで、何だか危なっかしいことこの上ない。
「姫様、お持ちいたしますよ」
 王女のようすに気づいたノートンがにこやかに声をかけた。
「あ、俺も」
 一緒にいたライネルも申し出る。
「あら、二人とも。ちょうど良かったわ」
 家臣たちの姿を見つけ、王女はにっこり微笑んだ。
「パンを焼いてみたの。あと卵焼きなども少し。もうすぐお昼だし、良かったら食べてみて」
 バスケットを差し出す。
「へ、よろしいので?」
 ノートンが受け取りながらサーシャの顔を窺った。
「ええ。まだ駆け出しの料理人ですけど、がんばって作ってみましたー」
 手にした紙袋をきゅっと抱きしめながら王女は言った。中に入ったパンの感触に気づき、サーシャは慌てて力を緩める。
「いけない。パンを潰してしまうところでした。料理人なのに不注意ね」
 サーシャが可愛らしくぺろっと舌を出す。
「姫様は料理人ではないでしょう」
 思わずライネルが口を挟んだ。
「あ、そうでした。今日の私はパン職人」
「いえ、そうじゃなくてですね」
 我らの愛するプリンセス──と言おうとしたライネルだが、ノートンの大声に遮られた。
「おうい、ルカも一緒に食わないか」
 ノートンは狩人の少年に声をかけていた。さっきからウロウロと遠巻きに彼らの様子を窺っていたのだ。
 ノートンに手招きされて、ルカがいそいそと嬉しそうに寄ってきた。
「よろしいですよね、姫様」
 事後承諾の形となってしまい、恐縮したようにノートンが尋ねた。
「ハイ。何人分も用意してますから」
 サーシャがコクンと頷く。
 王女はライネルと一緒に手際良くシートを敷き、持ってきた料理を広げていた。
「まるで大家族で行楽に出掛けるみたいな量ですな」
 ノートンが感心したように言った。
「ちょっと多く作りすぎちゃって」
 照れくさそうにサーシャが内幕をばらす。
「フム、それなら遠慮は要らないですな」
 ノートンが舌なめずりしながら言った。王女の腕前はこの遠征中、既に証明済みだ。
「遠慮する気など端から無いくせに」
 ライネルが友人をからかった。


「何だか懐かしい味がします」
 食べながらルカが感想を述べた。
「それはそうでしょう。だって、私の先生はラケルなんだから」
 サーシャがおかしそうに言った。
「ルカにとってはお馴染みの味だと思う。もちろん、グレードは落ちているでしょうけど」
「そ、そんなことないです」
 ルカが慌てて否定した。なぜか顔が赤らんでいる。
「姉さんの味つけに似てはいるけどっ。でも、やっぱり注意深く味わうとサーシャ様のオリジナルな味だと僕は思いますっ」
 ルカが身振り手振りを交えて力説した。
「ホント、うまいっスよ」
 ライネルが同意する。ノートンも隣で頷いた。
「そう? ありがと。私、自信持っちゃうわよー?」
 サーシャは満更でもない表情で言った。

 

 

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